てっぺん移住

パティスリー・ヒルンド・ルスティカ
パティシエ 桐山理央さん(25歳) 代表 桐山康介さん(33歳)

神奈川県でパティシエとして活躍していた理央さん、会社員で夫の康介さん夫婦は、宗谷への移住を決意。稚内市に念願の菓子店を新規オープンさせ独立を果たした。

理想の菓子づくりに必要だったのは、ふるさとの牛乳


「パティシエが、自分の店を持つのは普通、35歳くらいが妥当ですよね。やっぱり、若いと資金繰りがたいへんです」と話す理央さんは、現在25歳。起業に向けて活動を始めてから約8ヶ月で店をオープン。このスピードスタートに本人も驚きのよう。予定よりも売上は上々で、夕方ともなればショーケースは空の状態だ。「成功の自信なんてありませんでした。だけど、(パティシエの)先輩から、独立するならタイミングが大事だと言われて、まずは物件を探してみようと思いました」。夫の康介さんも妻の夢をサポートしようと、事業計画を立て、資金の工面に奔走した。

理央さんは宗谷管内にある豊富町の出身。故郷への思い入れは強く、出店するなら地元の宗谷地方へと決めていた。「新鮮な生乳を使えるのが魅力です。お菓子は素材の新鮮さが大切ですから」。実家が酪農家だ。昔から美味しい牛乳を味わっている。良質の生乳選びの行き着いた先は、やはり故郷の宗谷だった。

空きテナント探しのため、現地に入って自分たちの足で歩いて探した。食品営業許可が下りる厨房スペースに加え、居住も可能な物件となれば、簡単には見つからなかった。「テナントの募集広告などの情報がないので苦労しましたけど、ここの物件を紹介してもらったときに思いました。私、『持ってる』って」。

諦めない気持ちが夢を広げ、前進させる

諦めずに探し回った結果、創設されたばかりの稚内市の「中心市街地活性化支援制度(※)」の情報を得た。駅前再開発の名目から空き店舗の斡旋と家賃や設備費の助成を行うものだ。テナントの紹介を受け、悩みの種であった資金の問題も解決。改装費も人の紹介で安く済むなど、それからは二人が驚くほど事が運んだ。起業の計画が失敗したときのための“保険”として、会社員を続けていた康介さんも、事業が軌道に乗ったと確信し、移住の2ヶ月前に会社を退職した。

都会的なセンスを持つ若い女性パティシエと、地元の素材にこだわったスイーツは、稚内市内で話題を呼び、連日品切れ状態。若い夫婦は、次のチャレンジへとまた一歩踏み出そうしている。「ホテルへ商品を卸したり、ジェラートを商品化したり、WEB通販もやりたい。私の好きなことばかりして、夫はたいへんでしょうけど」。事務処理や営業、スタッフの雇い入れなど、経営面の仕事を受け持つ康介さんの出番が多くなりそうだ。

「稚内には可能性があると思っています。私たちみたいな若い人が戻ってきているので、雇用の面でも役に立てれば」と抱負を語る。
若い夫婦の移住が、街に良い影響を与えているのは間違いない。


稚内市中心市街地活性化起業化支援制度とは