てっぺん移住

礼文町教育委員会職員
クリストファー・ブラウンさん(36歳)

アメリカ合衆国ミシガン州デトロイト出身。アメリカの大学を卒業後、英語科教員として2003年に来日。北海道各地の自治体で小中学校の英語教科を指導する。2010年から礼文町に移住。英語教育の指導を続ける一方で、礼文町郷土資料館で展示される写真関連業務を担当する。自身が撮影した風景や人物の写真を全面に展開して礼文島の魅力発信に力を注ぐ。日本人の妻との2人暮らし。

礼文島に思いを馳せる

倒さ薄暮

「倒さ薄暮」
第3回秀景ふるさと富士写真コンテスト最優秀賞作品
※クリックで拡大します

Looking West

「Looking West」
※クリックで拡大します

礼文島唯一の欧米人であるクリストファーさんは、礼文町小中学校の英語科教員をしている。彼が、この離島に貢献するのは学校教育だけではない。注目されているのは礼文島の新たな魅力を捉え続けるアマチュア写真家としての一面だ。

日本国内での生活への希望は、高校生の時、ホームステイの体験からだ。地元アメリカの大学を卒業後は、JETプログラム(※)の英語指導助手として2003年来日した。故郷の気候に似ているため、過ごしやすいとの理由で北海道の勤務を申請、えりも町の小・中学校の英語科教員に着任した。今は妻となっている日本人女性との出会いもこの頃で、プライベートと仕事を充実させ、任期を全うした。その後も道内のいくつかの自治体で教員生活をした。

余暇には北海道内各地の旅行に出かけ、中でも利尻・礼文島の景色の美しさに圧倒された。「アラスカにもこのような景色はあるかもしれませんが、人の生活圏の中で見られるのは珍しい」。このときの衝撃が忘れられず、利尻・礼文島での生活に憧れるようになった。

移住への希望は、辛抱強く待つことで達成された。まず妻が、礼文町で保健師の職を見つけて、先に移住。2年間は、夫婦別々の生活を強いられたが、2010年4月から揃って礼文町での生活をスタートさせた。ところが、外国人が島ですぐにできる仕事はない。小中学校の英語教師の後任ポストが空くまでの1年半もの間、無職の時期を余儀なくされた。しかし、たっぷりあった時間を有効利用して撮り続けた礼文島の膨大な写真がクリストファーさんに転機を与えた。

異国人の目から映し出される島の魅力

春寒の最北航路

「春寒の最北航路」
第1回彩北航路フォトコンテスト優秀賞作品
※クリックで拡大します

桃ろうそく

「桃ろうそく」
※クリックで拡大します

クリストファーさんが撮影した風景写真の数々は、既存のそれよりも礼文島の魅力を倍加させる力があった。自然が本来持っている色彩の豊かさを活写させ、同じ被写体、同じアングルでも似たような表情の写真は一切ない。さながら壮麗な風景画のようだ。その見事な撮影センスはすぐに高い評価を受けた。観光協会主催の彩北航路フォトコンテストの最高賞である優秀賞を受賞、NTT東日本の2012年度カレンダーや郵便切手の図柄に作品が採用された。

クリストファーさんの実力を見聞きした教育委員会が、郷土資料館での作品展示を依頼。自信作を館内一面に掲示させて、ありきたりで地味だった館内が一気に華やいだ。これが縁で郷土資料館の写真関連業務を任されることになり、観光客だけでなく地元町民にも新しい魅力を発信している。

2013年には礼文島の冬の風景写真を集めた写真集『礼文の冬』を自費出版した。「写真を見て、冬の礼文の魅力に気付いてほしい。日本人だけでなく、アメリカ人にも見てもらいたいです」次の夢は、秋の風景写真集を出すこと。日本に数多く存在する離島の一つである礼文島が、太平洋を超えてアメリカの人たちに知られるのも、近い将来実現するかもしれない。

来日から10年以上の歳月が経過している。「コンビニで販売しているパンは、アメリカで食べていたものと違ってすぐに飽きてしまいますけど、ホームベーカリーで故郷の味を自分で再現させてますよ」と文化のギャップは気にならない。お祭りなどの行事にも積極的に参加し、周りからは「クリスさん」と呼ばれて町民の一人として馴染んでいる。

インターネット光回線が開通してからはアメリカの家族と、スカイプで顔を会わせて会話できるので、ずいぶん近くに感じている。一昨年の夏には、アメリカから両親と二人の弟が礼文島を訪れ、一緒にシーカヤックなどのレジャーを楽しんだ。異国で充実した生活をする今の自分を感じてもらった。今年は自宅を新築する予定で「家が広くなるので家族が遊びに来ても大丈夫」と話す。

2013年4月から礼文町に正式に採用され正職員となった。それと同時に礼文島のために働こうと決意を新たにした。礼文島で花開いた才能と異邦人特有の感性が、礼文島のPRを変えていく。クリストファーさんを魅了してやまない礼文島の神秘性は、写真を通して私たちも見ることができるだろう。


※JETプログラム:「語学指導等を行う外国青年招致事業」。外国語教育の充実と地域レベルの国際交流の進展を図るため、地方公共団体が実施している事業のこと。