てっぺん移住

恩田農場
恩田猛さん(52歳)

岐阜県出身。大学を卒業後、四国の造船所に4年勤務するが、北海道でトナカイを飼育したいとの思いから会社を退職。トナカイの本場フィンランドのラップランドで1年間、飼育技術を学び、昭和63年8月、28歳の時に単身で愛媛県から幌延町に移住、翌年2月にフィンランドから10頭のトナカイを輸入し牧畜計画をスタートさせた。現在、長女、次女は進学のため家を離れ、妻、長男との3人暮らし。

北海道の大地と畜産家への憧れを現実に

幌延町市街からさらに30キロ以上内陸に入った“上問寒(かみといかん)”というところに恩田農場はある。ここに移り住んだのは平成7年。「トナカイを飼育できるだけのある程度の面積があり、市街地から離れた場所」という条件で農場を探していたとき、運よく条件に合う離農農家があったのだという。

幌延町に単身移住してきたのは昭和63年8月、28歳のときだった。翌年の平成元年、町の有志20人で出資して有限会社トナカイファームを設立。トナカイを飼育できる土地を借り、最初は10頭のトナカイをフィンランドから輸入して、たった一人で飼育を始め繁殖させていった。平成3年にはさらに個人で180頭を輸入、その後、町営トナカイ観光牧場がオープンした平成7年に、それまでに輸入したトナカイと繁殖したトナカイを町に買い取ってもらい、現在の上問寒へ移転、100頭余りのトナカイで恩田農場の運営をはじめた。町営トナカイ観光牧場のトナカイたちは、最初に輸入したトナカイの2世、3世なのだ。つまり、恩田さんは日本におけるトナカイ飼育の開拓者だ。

目標に向かって続けていることが答え


恩田農場の敷地面積は50ha。そのほとんどはトナカイの食料となる牧草地だ。草を育てて乾燥させ干し草を作る作業に多くの時間を割く。農場のトナカイは肉を販売することが目的。販売先は主に北欧レストランだ。東京のホテルや道内のホテルで催事のある時などに引き合いが来る。スーパーに肉を卸すわけではないので販路を広げるという営業は基本的にない。特殊な肉なので、珍しいから扱おうというのではなく、直接レストランと交渉し、継続的に販売できる先を確保し、軌道に乗せることで経営を安定させていきたいという。

上問寒は人里離れた山間にある。周りには酪農を営む農家が数軒点在し、車の往来もほとんどない寂しいほど静かなところだ。「周りの酪農家の人たちは大らかで親切。干渉されることもなく気楽な付き合いが出来ています」。とはいっても、最初は周りに家がないので不安だったという。市街地から遠く離れているので、訪問者があるときは途中まで迎えに行くこともある。自然が豊かで静か―言い換えれば不便ともいえるが、しかし「トナカイを飼育するという目的のために、トナカイを飼える場所に住み、そこでどう生活するか」なので、住んでいる場所が便利かどうかは別の問題だという。

“移住”に限らないが、脱サラの経験から言えることは、目標をしっかり決めて、自分で決めた目標のために頑張れば、前に進むことができるということ。辛くても我慢できるだけの自分の目標がしっかりあれば、あきらめることはないのだ。「自分にとっては続けられること、続いていることが答えです」と言う言葉から、前例のないことをやり遂げようとする信念と、一人で挑戦し続ける強さが伝わってきた。


◇ほろのべトナカイ観光牧場ホームページ

http://tonakai-farm.com/