てっぺん移住

宮崎美智子さん(70歳)

兵庫県神戸市で42年間会社勤めをした後、59歳で退職。「100坪の土地を差し上げます」というラジオからの思いがけない呼びかけを聞き、退職金で家を建て浜頓別に移住。思い描いていた田舎での静かな暮らしを実現させた。

「都会を離れ、自然の中で静かに暮らしたい」という漠然とした思いが形になりました

100坪の土地をタダで差し上げます。浜頓別に住みませんか―そんな呼びかけをラジオで聞いたのは神戸で会社勤めをしていた14年前の秋のことだった。すぐにお問い合わせをし、その年も押し迫った12月末、初めて浜頓別町を訪れた。「サハリンに近いし寒いのかなぁ、雪も多いのかなぁって。自分の目で見て判断しようと思いました」。

12区画造成したものの、まだ1軒も家の建っていなかった土地を見て、「自然の中で生活できる。後悔はしたくない」とすぐに契約を結び、浜頓別への移住を決意。木造の山小屋風の家を建てたいという意向を町役場の担当者に伝えると、地元の建設会社を紹介してくれた。契約から3年後の平成13年秋に退職金で家を建て、平成14年4月、浜頓別の町民になった。

趣味が広がり、北国に来たからこそ知りえた楽しみを満喫する日々


山登りが趣味で日本アルプスの山々やネパールの山などを登ってきたと言う。「私が移住したのを機会に登山サークルの仲間たちがやってきて利尻富士に2回登りました」。雪山は歩くだけだったが、移住と同時にスキーにも挑戦。近所の人の指導もありすぐにスイスイ滑れるようになり、冬の楽しみも増えた。
高山植物や野生の花を好きなことが人づてに伝わると「ベニヤ原生花園のフラワーガイドに」と誘われ、夏の間はボランティアとして活動して10年が経った。

食に関しても無農薬の野菜や手作りの家庭料理を心掛けてきたことが生かされて、食生活推進協議会の学習会にも参加している。自宅の裏では20種類近くの野菜を生産。涼しい気候のおかげで虫が少なく農薬を使わないので無農薬野菜を自給自足。時々神戸の孫たちに段ボールいっぱいの野菜を送り喜ばれていると言う。ホタテの刺身の甘さ、生の鮭の豪快さ、脂の乗ったホッケのおいしさ、カルキ臭のしない水のおいしさなどは「神戸にいた時には知らなった味です」。

バスを乗り降りする町の人たちは、静かな町ののどかな生活をあたたかく感じさせてくれ、農道を歩けば周囲に広がる牧草地と遠くに連なる小高い山々が、郷愁と憧れとともに心の安らぎを与えてくれる。「寂しさや不自由を感じることはありません。きれいな空気とストレスのない生活のおかげで、神戸にいた時と違い、今は健康そのものです」。